ドイツのクリスマスについて(続編)        2000年12月29日

 

 先の記事「ドイツのクリスマス」の中ではまだ触れていない重要な2点をここに書き加えておきます。

1つは、フォイア-ツァンゲンボウレ(Feuerzangenbowle)、第2はドイツの教会のクリスマス礼拝についてです。

       Alster湖に映るクリスマスのHamburgの街

 

1.フォイアーツァンゲンボウレ(Feuerzangenbowle)

 寒い冬の日にドイツ人はグリューワインを好んで飲む事はすでに触れました。グリューワインは、赤ワインにレモンやオレンジの皮とシナモン、丁字、 そして砂糖を入れて80℃位に温めて作り、マグカップで飲みます。これをクリスマス市の寒い野外で飲む様子を想像するだけで身体の中が温くなってくるで しょう。

 これよりも楽しいのがフォイア-ツァンゲンボウレです。クリスマス・ホームパーティの時に電気を消した部屋の真ん中でフォイア-ツァンゲンボウレ をホストが作るのを周りで見ながら待つのが楽しいのです。材料はグリューワインとほとんど同じです。卓上コンロで温めた鍋に樋の形をした受け皿を置き、細 長い円錐形の砂糖の固まりをのせて、その上に火をつけたラム酒をかけます。すると青い炎をだし砂糖が崩れながら鍋の中に落ちていきます。この雰囲気とラム 酒とスパイスの香り、そして暖かさが何とも言えないのです。かつて、嵐 (Sturm)という映画の中で家族がクリスマスの時にフォイア-ツァンゲンボウレを囲む場面が描かれていて、それがドイツ人の心に今も焼き付いていると 言われています。

 私は、今回は大学の研究室の学生が金曜日の夜(12/8)作る場に居合わせ、口当たりのよいフォイア-ツァンゲンボウレをマグカップ2杯半も飲ん でしまいました。そばにいたチェコ人の青年たちとの会話もはずみ、帰る時間になって歩き始めると足がふらつきすっかり酔っていることがわかりました。しか し、身体中が暖っかでとてもよい酔い心地でした。

 

2.ドイツの教会のクリスマス礼拝

 アドベントの期間中、毎日曜日クリスマスを待つ礼拝やコンサート(バッハのクリスマス・オラトリオやコーラスが度々プログラムに取り上げられてい た)が開かれていましたが、やはり本番は24日のクリスマス・イヴ(Heiligabend)から始まるクリスマス(Weihnachtstag)です。 ドイツでは25,26日がクリスマス休日となっていますが、その意味とクリスマス以後がどうなるのかについて書きたいと思います。

 今年は24日が日曜日に当たっていましたので教会のクリスマス礼拝が例年と違っていたようです。私どもは、24日の朝は Hamburgの聖ミカエル教会の礼拝に出席し、その夜はKiel郊外のAltenholzという村の教会のイヴ礼拝に Schauer教授夫妻、海蔵寺夫妻と出席しました。まずイヴ礼拝の方から書きますと、林の中の雪道をぬけ、窓にクリスマスの明かりを付けた家々の間を歩いて教会に向かいました。村で唯一の教会の中に入ると、すでに村人で満席でした。

18時に女性の牧師が開始を告げ、よく練習を積んだ美しい聖歌隊の

合唱で礼拝が始まりました。中で歌ったクリスマス讃美歌はなじみのメロディであったので心を合わせて讃美ができました。礼拝が終わり、家族に手を引かれた老婦人が出口で“Frohe Weihnachten”(クリスマスおめでとう)と声をかけて下さり、さらに英語で今晩のメッセージが理解できましたかと聞いてくださったのは本当にうれしく、牧師のメッセージ以上に心に染み込みました。 

 

 一方、その朝の聖ミカエル教会の礼拝出席者もかなり多く、聖歌隊の讃美は小編成ながら質の高い素晴らしいものでしたが、率直に言っていつもの礼拝 とさほど変わらないという印象でした。後で聞いたのですが、聖ニコライ教会ではこの日の朝の礼拝がなかったそうで、まさに通常の礼拝であったのです。実 は、どこのルーテル教会も25日と26日の朝が本番のクリスマス礼拝でした。それぞれ第一、第二クリスマス日/礼拝と呼ばれています。日本では(少なくと も私が経験して来たバプテスト教会では)、24日直前の日曜日にクリスマス礼拝が行われ、イヴ礼拝で締めくくるといった日程が一般的で、ドイツの教会との 違いを見てどちらが正当なのかとちょっと考え込んでしまいました。 

 12月25日がイエス・キリストの誕生日でない事はすでに常識で、救い主イエス・キリストの誕生を祝う日であるという理解が正しいと考えられてい ます。なぜ前夜に礼拝を行うのかということも興味あるテーマですが、今回は触れません。ただ、キリスト降誕礼拝(クリスト・ミサ=マス)を25日に行うの は、当然と言えば当然のことです。しかし、日本ではイヴ礼拝に力点が置かれ、25日にクリスマス礼拝を行う教会は少ないようです。日本では24日の夜を境 にクリスマスの飾りが一掃され、25日からはお正月に向けて模様替えをするのをこれまでずっと見て来ました。日本がキリスト教国でないからと言ってしまえ ば簡単ですが、日本の教会が25日にクリスマス礼拝を行わない(行えない)ことは考え直してみるべき問題であると、ここドイツに来て感じています。

 一方、25,26日の両日ともドイツ人が教会に出かけるかと言えば、大部分のドイツ人は休暇(Urlaub)でどこかに出かけているか家族・親戚 と過ごしているようです。この点については、今回、私自身の無知で25,26日には教会に行きませんでしたので、自分の目で事実を確かめていないので類推 であることをお断りしておきます。

 

 27日以降のことを次に簡単に記しましょう。年内、街はいつもの通りで、仕事も休みではありません。尤も、多くの人たちが休暇をクリスマスと重ね てとっているようです。大学の研究室に出てくる人も数人だけです。大晦日の夜は特別で、友人などと会って賑やかに過ごし、大晦日の零時になった時に一斉に 花火をあげて気勢を上げるのが一般的なドイツ人の過ごし方のようです。元旦は休日ですが、2日からはいつもの生活に完全に戻ります。

 教会はどうかというと、実はクリスマスが続いています。教会暦では1年の始まりはクリスマスなので、クリスマスの飾り付けは新年まで取り払われることはありません。遅いところでは1月7日まで残されているそうです。

 こんな社会で日本人がどんな意識(アイデンティティ)をもって生活するのか(しているのか)もおもしろいテーマですね。 

アルスター通信・第2号」

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