7.素晴らしい絵画が展示されているヘッセン州立博物館のある町
ルイーゼン広場のすぐ近くにヘッセン州立博物館(Hessisches Landesmuseum)がある。ここにはドイツ中世から現代までの美術品が展示されている。特に強く印象に残ったのはクラナハの作品で、例えば、ルター夫妻の肖像画(度々見ていた原画に出会えて感激)、ビーナス、ヒエロニムスの絵だ。しばし足を止めて見入っていたが、同じコーナーに多くの宗教画、古い祭壇、木彫のキリスト/マリア/使徒の像が展示されているのには驚かされた。たぶんかつての30年戦争で破壊された教会から集めたものと思われる。
また、私の好きな画家であるP. ブリューゲルの作品に思いがけず出会えた。「絞首台のカササギ」1点であったが十分満足であった。その他、ドイツ印象派の画家コリントの作品「ハーレム」や現代絵画コーナーも充実していて、一度は訪れる価値のある美術館といえる。
Hessische-Bergstrasseワインは生産本数が少ないために産地近くの町以外では入手しにく い。私は、15年前のキール滞在中に西ドイツ国内の11の主要ワイン産地のラベルを集めていたが、Hessische-Bergstrasseだけは最後 まで入手できなかった覚えがある。そこで今回、Darmstadtのワイン店に案内して頂き、“幻”(私にとって)のワインを2本買い求めた。店内には Hessische-Bergstrasseワインが所狭しと並んでいるのを見て、15年前の苦労は何だったのかとしばし思いにふけってしまった。因み に、東西ドイツ統一により現在ドイツの主要ワイン産地は13地域になっている。(「ワインの辞典」より)
ルイーゼン広場近くの地ビールレストラン(というよりも寄合酒場)Brauerei Groheに中川先生につれて行って頂いた。中に入るとあちこちのテーブルは週末の飲み仲間と思われる地元の人たちでいっぱいだった。体裁を気にする雰囲気が全くない。注文をとりに来た店員も客と区別がつかない程だ。
地ビールGrohe-Bierと白ソーセージ(甘味の芥子/Suesser Senf付き)を注文。この取り合わせが実によく、舌が踊った!中の雰囲気にも合っていたので、中川先生とのおしゃべりが大いに弾んだ。この時に覚えたSuesser Senfの味をもう一度、と帰宅してからスーパーで瓶詰めを買ったが本場の味とはほど遠かった。
11月18日(土)の夕べ、フランクフルトの町に出てオペラ「魔弾の射手」(Der Freischuetz)を 観た。オペラを観るのはドイツに来て初めてのことで、この時中川先生が招待して下さらなかったらたぶん1年間行くことは無かったと思う。正直なところ恐る 恐る入って行った。理解できるかというよりも3時間もの長い上演中、退屈せずに座っていられるかどうか心配であった。オペラ劇場の中は正装した紳士、淑女 であふれていた。ますます自分には似合わない、と気持ちが後退してしまった。しかし、席はすでに決まっていた。前から7列目で舞台に近い上等の席だった。 歌手の一挙一頭足がよく見え、オーケストラの演奏もすぐ近くであった。
Weberの「魔弾の射手」序曲は、 讃美歌「主よ御手もて」でおなじみであったので安心して入って行けた。いよいよ始まると出演者の動きと歌手の声量と美しさに圧倒されっぱなしで退屈するど ころではなかった。中川先生は、超初心者である私に、事前にあらすじとオペラの聴きどころなどを詳しく書いた本のコピーを送って来て下さっていた。おかげ で言葉はドイツ語であったがスジの展開には大体付いて行けた。第3幕の「狩人の合唱」は高校時代に歌ったことがあったので懐かしさだけでなく、力強い男性 合唱に身震いしながら聴き入った。
途中2回の休憩をはさみ、3時間余の上演が終了したのは11時近くであったが、快い興奮につつまれながらDarmstadtのホテルに戻った。これがハンブルクに帰ってからオペラに関心の目が向く発端になろうとは、この時には全く予想もしていなかった。
*最後に、中川先生には帰国前のご多忙中、この拙文を読んでいただき事実と違った記述がないかチェックして頂きました。心より感謝申し上げます。